SPECIAL INTERVIEW

聞き手
リクパー・コミュニケーション・デザイン株式会社
代表取締役 花田政章

創業の志を貫いた10年

花田
創業時は3名だったリクパーも、現在ではグループ100名を超える規模まで大きくなりました。10年前のリクパー創業に際しては、どんな企業像、組織像を目指していたのでしょうか。
坂元
実は、企業像も組織像も創業時にして明確でした。今に至るまで少しもブレていません。まず企業像は、人材領域のあらゆる課題にワンストップで対応できる人材プロフェッショナルファーム、いわば人材領域における多種多様な課題への処方箋を書きあげる「街の名医」ですね。いっぽう目指す組織のイメージは、私が少年時代に観た映画「がんばれベアーズ」です。問題児だらけのチームが結束し、切磋琢磨を重ねて成長していく。あの世界観を体現したような会社にしたいと強く願っていました。
花田
問題児だらけのチームですか。人材プロフェッショナルファームを目指すのであれば、また違った組織像、たとえばスキル重視の即戦力採用で、優秀なスター社員を揃えることを選ぶ道もありますが、なぜ「ベアーズ」だったのでしょう。
坂元
ひとつには、私自身が「問題児」だったからでしょう(笑)。若さだけが取柄の売れない営業マンが、あるいは持てる能力を発揮できずにくすぶっている若者が、多くの出会いによって目覚め、鍛えられて、仕事の意義や仲間の大切さを体感する。その厳しくも愛すべきプロセスを、一人でも多くのメンバーと共有したいと願ったのかもしれませんね。もうひとつの理由は、顧客との距離です。人材領域の諸課題、とりわけ採用は企業の根幹に関わる経営課題であり、その解決を担うには、顧客との距離が近いことが絶対条件だと私は考えています。能力的には発展途上であっても、顧客の懐に飛び込む素直さや、常に顧客の身になって考える共感力を備えたメンバーは、多少時間はかかっても、例外なく多くの顧客の信頼をつかんでいます。人材領域の課題解決を手がけるリクパーでは、メンバーそれぞれの人間力こそが大きな資産なのです。
花田
リクパー自身の採用選考において、可能性や潜在能力、何よりも“一緒に働きたいと思えるかどうか”を重視する「人柄採用」を貫いている理由も、そのあたりにありそうですね。
坂元
おっしゃる通りです。現代の企業、特にベンチャーでは、常に新しいビジネスモデルを探究し、事業の形に添って組織を変える「事業ありき」の経営が主流のように感じます。ですが、私は創業時も今も“このメンバーたちを生かすにはどうしたらいいか”という「人ありき」「組織ありき」の発想で仕事をしています。そういった意味では、独特の立ち位置の会社といえるかもしれません。

満点ではないが、会心の70点

花田
そうしたリクパー流を貫いた結果、創業以来10年連続で増収増益となりました。現時点で点数をつけるとしたら、何点になりますか。
坂元
100点満点でいうと70点ですね。全員が街の名医と胸を張れるかといえば、まだまだですから。いっぽうで「リクパーさんだから」「担当が○○さんだから」と言ってくださるお客様が年々増えています。リクパーの社柄やメンバーの人柄が信頼された証です。この信頼関係は私たちの最大の資産であり、将来に向けても大きな強みとなりえます。仮にリクパーが、メンバーの人柄や地域密着へのこだわりを軽視し、いわゆる人材コンサルの道を選んでいたらどうなっていたでしょう。売上数字は大きくても、サイドバイサイドで顧客と同じ景色を見る人間的な関係を築くには至らず、「リクパーは有能だが冷たい」「いざという時に頼れるのか」と、少なからず距離を置く顧客が目立ったかもしれません。その場合、数字を高く評価しても総合点はせいぜい70点。そう考えると、今のリクパーの70点は大いに価値ある70点だと思っています。
花田
100点に足りない30点、つまり現状の課題としてはどんな点が挙げられますか?
坂元
当初の理想は、総合ソリューション、つまりメンバー一人ひとりがワンストップの幅広い対応力を体得しているプロ集団でしたが、残念ながら現在はまだそのレベルに至っているとは言えません。
花田
その点で言うと、リクパーグループでは数年前からチーム制を取り、顧客ごとに営業、企画、クリエイティブなど複数の職種のメンバーがプロジェクトを組んで、チームでワンストップの対応を行う体制になっています。いわば組織で総合ソリューションを提供しています。当初の理想の形とは少し違うかもしれませんが、結果的にチームの厚みが信頼の厚みにつながっていると言えないでしょうか。
坂元
確かにそうですね。よくよく考えれば、現状のスタイルもまた「ベアーズ」を志向してきたリクパーらしいのかもしれません。

次の10年に向けて

花田
リクパーグループは創業11年目を迎えました。今後に向けては、どんな展開を思い描いていますか?
坂元
創業以来10年間、リクパーは1+1+1…と、着実に積み上げる足し算で、10の基盤を築くことはできました。この基盤をどう活かすか、それは私というより、100人を超えたメンバーみんなが考えることだと思っています。今後も足し算を重ねて10年後に20になるのもいいし、掛け算で100や1000を目指すのもいい。事業面では、独自の自社開発商品や、新たなサービススキームを考えるフェーズに来ています。もちろん、そうしたチャレンジを担うのもメンバーたちです。若いメンバーたちが、関わる人たちを幸せにする「正しい野心」を燃やしながら、リクパー10年の資産をうまく活用し、私が思いもよらないようなおもしろいサービスや新しい事業を形にして見せてくれることを期待しています。
花田
創業からの10年と、これからの10年。違いがあるとすれば、どんなところでしょう?
坂元
これまでは確かな土台を築いた10年、物語で言えばプロローグにあたる部分です。これからの10年は、本編の第一章に相当する重要な期間です。プロローグで示した基本姿勢、つまり企業文化であるリクパー8バリューの精神をしっかりと守りつつも、顧客の期待を上回るような新しい展開が求められます。全員の力で、誰も目が離せないほどのおもしろいストーリーを紡いでいきましょう。
花田
本当の勝負はこれからということですね。一緒にがんばりましょう!